コラム/建築革命宣言!
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第4回

「分断から融合へ」〜その2 山中省吾 1999.06.07

オープンシステムの建築士はパートナー
自分のお金を出して建築を依頼する当人にもかかわらず、あるところから先は業者にまかせきりになり、そして、出来あがった結果だけを受け取ります。建築業者の側に「お客様に知られては困ること」があるから、こうなってしまうのです。隠れた部分があるからこそ、「オイシイ」ともいえますが。これが今までの建築の現実です。オープンシステムの建築士は、知り得たことを全てお客様に公開しながら業務を進めていきます。隠し事が一つもありません。隠す必要もありません。原価も全て公開します。ですからお客様は、業務をオープンシステムの建築士に委託しつつ、いつでも自らが積極的に協議や決定事項に参加することが可能なのです。オープンシステムの建築士は、お客様の身になって考え、行動する「パートナー」なのです。もちろん工事現場においては、専門工事会社の人たちとも「パートナー」という関係になります。平たく言えば、「上下関係をつくらない」ということです。

専門工事会社が見積に参加
少し理屈っぽい話になったので、現実にもどします。読者に関係する部分を中心に、オープンシステムの特徴を説明します。設計業務の完了が近づくと、専門工事会社に見積の参加を呼びかけます。専門工事会社とは、普段「下請」と言われている業者のことです。読者の大部分もそうではないかと思います。同じ業種に複数の業者が見積に参加することになります。板金工事A社・B社・C社…という具合です。提出された見積書は、そのままお客様に公開されます。金額、内容、実績などを考慮して、お客様とオープンシステムの建築士が協議して、どこに工事を依頼するかを決めます。一通り工事会社が決まると、建築工事の総額がはじき出されます。お客様の予算内であれば契約、着工という運びになりますが、予算をオーバーした場合は、設計変更・再見積・価格の再交渉という手順を繰り返します。

お客様と専門工事会社が直接契約
工程管理表・工事代金支払表・工事請負契約書をオープンシステムの建築士が準備します。準備が整うと、いよいよ契約・着工です。お客様とオープンシステムの建築士との間には既に「建築士業務委託契約」が交わされています。私たちはお客様から業務に必要な費用をいただいて仕事を進めていきます。ですから、工務店やゼネコンと違って、「値切った分だけ儲け」「工事の手を抜いた分だけ儲け」とはなりません。請負ではないのですから。第三者の立場で動きます。工事請負契約は、お客様と専門工事会社が直接契約を交わします。書類作成や日程の取り決めは、オープンシステムの建築士が行います。これも業務のうちに含まれています。契約の日はお客様・オープンシステムの建築士・専門工事会社が一堂に会します。1社づつあいさつを交わしながら、契約書に印を押します。「屋根・樋・外装工事の**板金店です。よろしくお願いします。…」と。支払いはお客様から直接専門工事会社の銀行口座に振り込まれます。工程表に則って、あらかじめ支払い金額と支払日が工事請負契約書に記入されています。基本は出来高払いです。

専門工事会社にとってどのような意味を持つか
さて、専門工事会社にとって、オープンシステムはどのような意味を持つのでしょうか。専門工事会社がお客様と直接契約を結ぶ、ということはあまり経験が無いと思います。今までは「下請業者」と言われていたわけですから。これが、オープンシステムの場合は「元請会社」になります。建物全体を請け負うわけではありませんが、自分達が請け負った建築の一部分に関して、お客様と直接契約を結ぶのですから、立場は「元請会社」です。従って、労災保険の加入などということも生じてきます。 「元請会社」と「下請会社」の一番の違いは何でしょうか?オープンシステムの工事現場に入ったとしても、実際に行う作業の内容は、下請としてどこかの工務店の下で行っていた内容とほとんど変わることはないでしょう。今までと同じ「意識」であっても、現場はそれなりに進んでいくでしょう。しかし、目には見えない「意識」の微妙な違いは、将来、大きな違いとして現れてくるように思います。その意識とは「自己責任」の意識です。下請として指示を待って動くのか、お客様のパートナーとして、自分に何が出来るのかを考えて、積極的に動くのか。この違いです。オープンシステムも今までの建築業界の枠組みを引きずったまま、現時点では展開していかざるを得ないところもあります。お客様・設計者・専門工事会社、この3者が、自立した考えの基に「自己責任」を全うして、はじめて理想形に近づいていくのです。専門工事会社が下請という意識から脱却して、自己責任の基に能動的に動き出す。そうなったときに、本来、もっとも適任者である人の手に、天は大きなプレゼントを与えてくださることでしょう。身近にあって、手をこまねいている分野は読者の周りにはありませんか?

「分断から融合へ」〜その3に続く
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