コラム/建築革命宣言!
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第5回

「分断から融合へ」〜その3 山中省吾 1999.06.15

どのように変わったのか・その1
漠然とした話になったので、再びもとに戻します。オープンシステムによって具体的に何がどう変わったのでしょうか。実際にあったエピソードなどを話してみましょう。オープンシステムの建築士がお客様から沖縄旅行に招待されました。本当です。逆ではありません。「家族会議をした結果、建築士の労をねぎらってあげることにしました」と。まさに、施主対請負業者という関係から、パートナーの関係に変化したことの現れです。このお客様はオープンシステムで家を建てるかどうかを、銀行や親戚に相談したところ、皆が反対したそうです。「一生の財産を託すのだから、聞いたことも無いやりかたはやめたほうがよい」と。それでも踏み切った勇気のある人です。結果はハッピーでした。全業種の専門工事会社の代表が、住宅の竣工式に招待されたこともあります。これもパートナーの関係の現れです。その日は、専門工事会社の人たちは、背広とネクタイ姿で恥ずかしそうにしていました。式は盛りあがり、皆さんお酒が好きなのはけっこうなのですが、「大将、お願いですから、竣工式の席で酒を飲んで、喧嘩をすることだけはやめてください」

どのように変わったのか・その2
自分のお金を出して建築を依頼する当人にもかかわらず、あるところから先は業者にまかせきりになり、そして、出来あがった結果だけを受け取ります。建築業者の側に「お客様に知られては困ること」があるから、こうなってしまうのです。隠れた部分があるからこそ、「オイシイ」ともいえますが。これが今までの建築の現実です。オープンシステムの建築士は、知り得たことを全てお客様に公開しながら業務を進めていきます。隠し事が一つもありません。隠す必要もありません。原価も全て公開します。ですからお客様は、業務をオープンシステムの建築士に委託しつつ、いつでも自らが積極的に協議や決定事項に参加することが可能なのです。オープンシステムの建築士は、お客様の身になって考え、行動する「パートナー」なのです。もちろん工事現場においては、専門工事会社の人たちとも「パートナー」という関係になります。平たく言えば、「上下関係をつくらない」ということです。

専門工事会社が見積に参加
専門工事会社のある社長さんはこのように言っていました。
「気持ち良く仕事ができるようになった」
オープンシステムだと儲けが大きいということではなく、むしろ競争があるために、シビアな金額を要求されるのですが、「むちゃくちゃな押し付けは無くなった」という意味です。上下関係で仕事をするのではなく、パートナーですから当然です。支払日にさらに値切られることもありません。「今回は泣いてくれ」ということも、「次で返すから」ということもありません。いつ現場に入るのか、いつ現金が入るのか、ずいぶん前から把握できるため、仕事の予定の立て方、資金繰りのための銀行との折衝が、やりやすくなった、という話も聞きました。もっともこのようなことは、ある程度オープンシステムでの量が確保され、継続性があってのことでしょうが。まだ残念ながら、一部の地域に限ってのことです。段取りや現場での打ち合わせを、今までは工務店やゼネコンの現場監督さんとやっていたものを、オープンシステムの現場では監督さんがいませんので、オープンシステムの建築士と行うことになります。今のところ大きな混乱は起きていませんが、なにぶん不慣れな者(設計事務書の建築士)が携わりますので、大きく暖かい目で見てください。逆にいろいろと教えてください。「この際、日ごろの仇をとってやる」なんて思わないでください。皆一所懸命に取り組んでいますので。

オープンネットを発足・会員募集
昨年の秋に新しい会社「オープンネット(株)」を発足しました。オープンシステムは単独の事務所でもやれないことはないのですが、非効率です。ネットワークの力で効率を上げることと、今まで単独の事務所では出来なかったことを可能にすることが目的です。現在、正会員35社、準会員14社が加盟しています。正会員はオープンシステムで建築をしていきたいという設計事務所、準会員はオープンシステムの工事に参加したいという専門工事会社です。他に特別会員というのもあります。これは、誰にも真似のできないような特殊な技術を持っている専門工事会社などを、オープンネットが全面的にバックアップして、全国に広めようというところです。今のところ1社です。準会員の数が少ないのは、まだあまり呼びかけていないからです。ある程度地域の中に正会員が増えて、オープンシステムの仕事が確保できないと、準会員もおもしろくないだろうという遠慮もあります。関西、関東、山陽方面では正会員の数も増えてきたので、そろそろオープンシステムの仕事が出てきそうです。よかったら検討してみていただけませんか。ただし、オープンシステムは準会員である専門工事会社としか仕事をしない、ということではありません。準会員にならなくても見積の参加や工事の受注は可能です。準会員になって登録しておくと、正会員の設計事務所やお客様が閲覧するので、見積参加の機会が増えるということです。営業費用だと思っていただかないと腹が立つかもわかりません。入会金3万円、年会費2万4千円が必要です。

ネットワークで何が変わるのか
単独の事務所ではなかなか進まなかったこと、この推進役をオープンネット(株)が担います。事業計画書が評価され、べンチャーキャピタルの投資、創造法の認定、さらに監査法人トーマツにも顧問として参加していただきました。今年の1月には東京で記者発表を行い、今後の発展に対する手応えを得ました。マスコミの関心も非常に高く、社会的な要望に合致した事業であるという確信も得ました。オープンネット(株)の行う事業については、詳しく解説するほどの誌面が用意されていません。こうして原稿を書いていながら、「もう既に予定の分量を過ぎているのでは」と気をもんでいます。次回は何が変わるのか、例をあげて説明します。

「分断から融合へ」〜その4(最終回)に続く
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