コラム/建築革命宣言!
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第14回

情報共有・建材OEM・補償制度等について 山中省吾 1999.11.24
JIA大会‘99講演の要約(JIA:日本建築家協会) 講演スライド ←DLに多少時間がかかります。

はじめに
 現状の建築業界はどこかがあべこべになっているのではないか。建築業者(私たち建築設計者も含めて)のためにクライアント(お客様)がいる、という理論で動いていることがあまりにも多すぎる。クライアントの立場になって、私たち建築専門家は、もう一度原点に帰って発想し直すべきではないか、と試行錯誤の中で取り組みはじめた。92年の夏だった。正直いってCMとは何なのかよく分からない。96年に日本建築学会から講演の依頼がきた。
「CM/PMに関して事例報告を…。」
「ん…CM…PM…?」
私のやっていることがCMだといわれた。建設経済研究所からもヒアリングを受けた。私のはピュアCMだといわれた。何が正統派のCMか私には分からない。クライアントの満足度を求めて、できる限りのことをやってきた。これからもそのつもりである。

住宅建築に多重下請けは必要か?
 元請会社が介在しないほうが良い住宅が建つ。そう思った。クライアントが直接専門工事会社に分離発注すればよい。そうすれば、元請会社の宣伝広告費も営業費用もモデルハウスの費用も工事代金に上乗せされなくて済む。事実多くの工務店やハウスメーカーは、元請会社としての管理や監理をほとんどしていない。現場の進捗状況をパトロールして回っている、といえば言いすぎだろうか。でなければどうしてこんなに多くの欠陥住宅が建っていくのだろう。20%とか30%とか言われている元請会社の経費は、いったい何処に使われているのか。それだけのフィーをいただけるなら、私たち建築設計者は、もっと良い建築を造ってみせるという自負と自信がある。だから敢えて元請会社を排除した。私のオープンシステムは既存の建築業界に対するささやかな反抗から始まった。

建築事務所のネットワーク
 97年ころからこういった考え方に共感する設計者が、各地でオープンシステムに取り組み始めた。その年に5社になった。5社は米子市、大垣市、大阪、大阪、岡山と遠隔地であったが、5社ともインターネットを行なっており、日常はメールでお互いの情報を交換することが容易にできた。年に4〜5回集まり(主に大阪)お互いの問題点や克服すべきことなどを話し合ってきた。98年2月、ネットワークの機能をさらに充実すべく、新しい会社を設立しようという議題が出た。個々の事務所でもできること、ネットワークのほうがやりやすいこと、ネットワークでなければできないこと、等を整理した。さらに私たちの目指していること、社会的な意義、収益基盤、市場性、経営戦略等をビジネスプランとしてまとめ、98年9月にオープンネット鰍設立した。5社が出資して役員になった。さらにごうぎんキャピタル梶i山陰合同銀行系)が資本参加、監査法人トーマツも顧問として参加。ネットワークに参加してする設計事務所は、インターネットが使えることを条件とした。情報の速度と量に対応するためである。この原稿を書いている99年10月20日現在、参加事務所は秋田県から大分県まで46事務所になった。

経験情報の共有化
 これからオープンシステム(CM?)を始めようという事務所にとっては、未経験の要素が多いため不安や戸惑いがある。そこで既に経験を積んだ事務所の持っている情報を共有化することとした。情報には建築単価、工程の調整、受託活動、必要書類等の情報が含まれる。ある程度整理されたものはHP会員のコーナーで見ることができ、そのときどきの問題点はMLで行なっている。MLは弁護士、会計士、税理士、土地家屋調査士など建築以外の専門家に参加いただいて、法律問題、税金問題等にも対応している。

建材のOEM化等
 木材や建材、さらにキッチン等の機器は木材会社や建材店数社から見積を取り、クライアントが直接購入する。勿論工務店やハウスメーカーの見積よりは安くなる。それでもメーカー⇒問屋⇒建材店と重層的になっている。もっと安くならないか。私たちはメーカーが自社で製造していないOEM(相手先供給ブランド)商品に目を付けた。それを製造元から一旦オープンネットが仕入れ、直接クライアントに購入していただくというルートを開拓した。既に開拓済みの商品はユニットバス、床暖房、石材がある。さらに木材加工品等を産地から直接仕入れるルートの開拓にも力を入れ、少しづつ実現しつつある。

建築補償制度
 クライアントに分離発注による工事をすすめた場合、耳慣れない方式のため、不安感を覚える人もいる。工務店やハウスメーカーの営業は、分離発注の弱点として強調する。
「もし、専門工事会社が倒産したら…。」
「もし、建物に欠陥が生じたら…。」
いったい誰が補償するのか、だから元請会社が必要なのだ、と彼らは言う。私たちは、このようなリスクを大手損害保険会社と提携して、建築補償制度を作ることにより回避する方法を選択した。元請会社にしてもいつ倒産するか分からない時代、そのときのクライアントの被害は甚大である。分離発注によるリスクを損害保険会社と共同で回避する仕組みは、最もリスクの少ない手法ともいえる。さらに大手損害保険会社の協力を得たということは、建築設計事務所がチェックをして工事を進める建物は、従来方式に増して信頼性が高まるとの判断でもある。
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