コラム/建築革命宣言!
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第26回設計事務所と施工(2)
〜プレゼンテーションと原価管理〜
アイ・シー企画(株)
長谷川浩一
2000.09.05

◆今までの設計者は不透明な概算見積を出していた
 建築主が設計者に依頼をして、いろいろな夢を語りながら、具体的な形にしていくわけであるが、どの時点で具体的なプランを出すかは、その設計者の設計手法で変わると思われるが、多くの建築主は家を建てるのは初めてであるし、ましてや建築に関して素人なのが大半である。そこでまず問題となってくるのが、いったいどのくらいで家を建てるのか、家が建つのか。どのくらいのお金を用意したらいいのか、どのくらいのお金しか用意できないのか。やはり建築費の問題が一番になってくる。
 (まれに大金持ちで金に糸目を付けないという人もいるが)設計者が建築主の要望を聞いて具体案を提示したとき、いったいこれがいくらでできるのか、最大の関心事である。
 通常、今までの経験から坪当たりの概算で坪当たり50万〜55万くらいですとか、おおざっぱな数字を提示して、後は工務店が見積を入れてきてから調整すればいいといった手法でやってきたと思う。ところが、オープンシステムは、建築価格をガラス張りにして、工務店の介在をさせないことでコストダウンを計ろうとしている。工務店が見積を入れてといったことはできない。じゃ、建築主にいったいどのくらいの金額でできるのか、分離発注の業者の見積がそろうまでわからないでは、お客は納得しないであろう。

◆VE導入により基本設計時でのコスト把握を確実にする
 ここにおもしろい論説がある。建設プロジェクトににおけるVE適用成果のもっとも高い段階は、基本設計完了時であるといわれている。なぜ基本設計完了時に高い成果を得られているのか、理由を整理すると下記のようである。
1.基本的に建設コストの大部分は設計初期のスケッチ図面の段階、すなわち建物の概要が固まる段階で決まってしまう。つまりコスト節減面から見てこの時点でのVE適用がもっとも効果的であること。
2.また同時に、実施設計へ進む段階で設計計画が予算内に確実に収まっているかの検討ができる。
3.VEワークショップを設計初期で行うことにより、図面が増えないうちに変更すべき箇所は変更し、後の段階での設計の手戻りを少なくできる。
4.設計段階でのVE導入をコスト管理業務の一環とすることにより、設計案のコスト把握を確実化し、もし予算オーバーしていれば代替案によるコスト低減方策を探る手段の場とできる。
 この論説はVE手法導入に関する論説なのでコストを把握する直接的な手法ではないが、VE導入はコスト節減に密接に関係しているので同じものだと考えられる。

◆基本設計時でのコスト把握はこれからの重要な要素になる

 我々が今取り組んでいるプロジェクトは大半が住宅なので、コスト把握も一定の基準値を当てはめることによってかなりな精度でコストを把握することができる。例えば下記の表はある木造住宅の床面積に対する工種別比較表である。
金井邸 延332.16u 構成比 %
RC3階 延100.48坪 延u当 延坪当
共通仮設工事 2,103,000 2.75 6331 20930
直接仮設工事 1,420,000 1.86 4275 14132
土工事 1,820,000 2.38 5479 18113
杭・地業工事 3,400,000 4.44 10236 33838
コンクリート工事 5,144,000 6.72 15487 51195
型枠工事 7,500,000 9.80 22579 74643
鉄筋工事 3,400,000 4.44 10236 33838
鉄骨工事   0.00 0 0
組積工事   0.00 0 0
防水工事 1,010,000 1.32 3041 10052
石工事   0.00 0 0
タイル工事 850,000 1.11 2559 8460
木工事 5,150,000 7.52 15505 51255
金属工事 2,203,000 2.88 6632 21925
左官工事 950,000 1.24 2860 9455
金属製建具工事 2,360,000 3.08 7105 23488
木製建具工事 550,000 0.72 1656 5474
硝子工事 480,000 0.63 1445 4777
塗装工事 820,000 1.07 2469 8161
内装工事 1,370,000 1.79 4125 13635
雑工事キッチン 2,500,000 3.27 7526 24881
UB・化粧台 1,831,000 2.39 5512 18223
造り付け家具 730,000 0.95 2198 7265
カーテン・ブラインド 900,000  1.18 2710 8957
診療所家具等 2,800,000 3.66 8430 27867
診療所看板等 400,000 0.52 1204 3981
建築工事計 49,691,000 64.91 149600 494546
電話設備 340,000 0.50 1024 3384
電気設備工事 3,880,000 5.07 11681 38615
機械設備工事 8,428,000 11.01 25373 83879
昇降機工事 2,200,000 2.87 6623 21895
設備工事計 14,848,000 19.40 44701 147774
建築本体計 64,539,000 84.31 194301 642320
外構工事 2,160,000 2.82 6503 21497
解体撤去工事 1,750,000 2.29 5269 17417
直接工事費計 14,843,000 87.61 206072 681234

過去のデーターを整理することで同じような仕様の物であれば面積比率でコストの概算をつかむことができる。
 住宅以外の物ではどうであろうか。いろいろと概算の算出方法があると思うが、下記の表は我が社で作成した概算算出システムである。現在RC、鉄骨造の共同住宅住宅が対象である。

集合住宅概算工事費試算表  RC
工事名称    
発注者    
所在地   
敷地面積   
地域・地区 第1種中高層住宅専用地域    建ぺい率    60% 容積率    200%
構造 RC造      地上  4階      地下    階       住戸  21戸
延べ床面積 延べ床面積   1860u       562 坪
工期 平成  年  月  日  〜  平成  年  月  日
その他   

概算躯体数量計算
工事項目 法延べ床 係数 数量 単価 金額 係数 総工事費
               
コンクリート工事 1,860 0.74000 1,376 17,600 24,217,600    
型枠工事 1,860 4.65000 8,649 4,300 37,190,700    
鉄筋工事 1,860 0.09700 180 99,000 17,820,000    
          0    
               
          79,228,300 4.51 357,319,63

工種別工事費内訳計算表・対比表
名称   概算金額
(円)
         
構成比費目 357,319,633          
共通仮設工事 3.00 10,719,589          
直接仮設工事 2.70 9,647,630          
土工事 1.20 4,287,836          
地業工事 3.80 13,578,146          
コンクリート工事 4.50 16,079,383          
型枠工事 12.80 45,736,913          
鉄筋工事 5.50 19,652,580          
鉄骨工事 0.07 250,124          
組積工事 0.07 250,124          
防水・防湿工事 0.80 2,858,557          
木工事 4.50 16,079,383          
金属工事 2.30 8,218,352          
金属製建具工事 3.70 13,220,826          
木製建具工事 2.40 8,575,671          
硝子工事 0.70 2,501,237          
左官工事 3.20 11,434,228          
タイル工事 2.20 7,861,032          
石工事 0.06 214,392          
塗装工事 0.80 2,858,557          
内装工事 4.50 16,079,383          
雑工事 6.10 21,796,498          
建築工事費小計 64.90 231,900,441          
電気設備工事 5.70 20,367,219          
機械設備工事 9.90 35,374,644          

 もう少し精度のある表もあるが、複雑なのでここでは省くことにする。
 このように基本設計、いやプレゼンテーションの平面計画ができた時点でコストの把握ができればその後の建築主との交渉も具体的な形で進めることができる。これは我々設計者がオープンシステムを進める上で、重要な要素の1つだと思う。
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