コラム/建築革命宣言!
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第28回設計事務所と施工(4)
〜品質管理は工事計画から〜
アイ・シー企画(株)
長谷川浩一
2000.11.13

◆品質の善し悪しは、段取り如何で大きく変わる
 工事を進める前の作業として、この工事をどのように進め、いつ終わらせるか、工程表を作成する。今まで施工者に書かせていたこの工程表を自ら考え描き、そして実行させる。オープンシステムの設計者はその部分にも精通しなければならない。現場は段取り8分といわれるが、ゼネコンの所長で腕がよく、よく儲ける所長はこの段取りがうまいのである。工事が複雑になればなるほど、段取りよく次々と進めることは相当の経験と、知識、知力が必要である。それに加えて、現場の段取りの善し悪しが如実に現れてくるのは、出来映えである。出来映えすなわち、品質の善し悪し、これが段取り如何で大きく左右される。
 ではこの段取りをよくするのにはどうしたらよいか。基本設計、実施設計、積算、契約、これらの段階を経ていよいよ工事を進める時に、工程表を作成することになるが、一体何を根拠に作成するのか、もちろんベテランの建築士であればそのへんは把握していると思うが、あえて今回は書くことにした。

◇     ◇     ◇

 まずこの工事のいろいろな工種の工法、及び数量は把握できているか、そしてその工種工法の歩掛かりがわかっているか。例えば掘削工事を行うとき、重機は何を使うのか、また、土砂の運搬車両の大きさ、台数、搬出場所からの距離等によって進捗の度合いが違ってくる。また現場での作業手順、安全性、使用資材の準備、運搬経路等あらゆる角度からの検討をして初めて工程が書けるのである。これらの検討をあらゆる工種に当てはめて初めて全体の工程が把握でき、工程表として描けるのである。だから1枚の工程表は、その工事のすべての工種に精通し、工事終了までのモデリングが頭の中で描けなければ、書けないのである。

◆現場職人とのコミュニケーションも大切な要素
 これには経験することが一番であるが、現在のようにスピードを要求される時代では、なかなか経験を重ねるまで待ってはくれない。
 ではどうすればよいか。オープンシステムでは専門工事業者の協力を得て工事を進めている。その専門工事業者はここ数年、ゼネコンから管理業務の委譲を受けて自主管理の体制を確立しつつある。まだまだ不十分な部分もあるが、小規模工事の場合は彼らの管理体制で十分工事を進めることができる。もちろん全体調整の主役は設計者だから、予備知識として専門工事業者の施工管理の手法を取り入れることは十分に可能である。まず工事着手前に主だった専門工事業者と協議をし、工事の計画を彼らの意見を採り入れながら、立案していく。そして施工図、工程表、仮設計画、工種別施工計画等をまとめ、工事着工前にすべての工事の段取りを把握してしまうことである。

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 その点オープンシステムでは発注業務が工事着手前にほとんど終わってしまうので、専門工事業者の協力は得やすい。そして工事が始まったら、最初に描いた段取り通り進んでいるか、何かトラブルはないかをまずチェックする。特に工程のクリティカルパスをしっかりとつかんで、その部分での出戻りをなくすことが大切だ。そうすれば無理、無駄、が省かれスムーズな工現場運営が計れるわけで、現場管理者の資質に求められる、KKD(経験、勘、度胸)が無くても(ある程度は必要)論理的に進めることができる。
 もちろん、全体調整の中で職人とのコミュニケーションも大事な要素の1つである。柔らかくいうと現場で職人に嫌われないことである。特に無理な要求をしなければならない場合には、日頃のコミュニケーションがいかに大事か実感すると思う。工事規模がまとまっている場合はもっとマニュアル的なものになるが、ここでは省かせてもらう。いい建物は段取り1つで最悪な建物にも変身しうるのだ。
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