コラム/建築革命宣言!
第31回 『GyousyaBank(業者バンク)』が時代を変える (株)フリーダム・リノ
山本一清
アイ・シー企画(株)
長谷川浩一2001.04.11
元請け業者を介さず、建築士の設計思想と専門工事業者の価格競争力がストレートに顧客に反映される。
そんな理想の家づくりを実践している、全国各地の建築士のネットワーク、『オープンシステム』。
まさにCMの先駆的な事例である。
ここでは、会員である潟tリーダム・リノ代表取締役山本一清。氏と、アイ・シー企画椛纒\取締役長谷川浩一氏に、オープンシステムの一翼を担う専門工事業者の会員組織『GyousyaBank(業者バンク)』についてお聞きした。
◆『GyousyaBank(業者バンク)』とは
GyousyaBankは、オープンシステムにおける専門工事業者の会員の総称である。'00年3月に関西で開催した第1回説明会で30社が入会。その数は全国で増え続けている。
「オープンシステムの知名度が高まるにつれて、個々の会員に遠隔地からの問い合わせが増えてきた。でも、遠隔地になると、業者探しに苦労する。電話帳を見て、FAXを送りまくって・・・。その点オープンシステム会員は各地にいて、各々地域の業者さんを知っている。その情報を共有化できれば」と長谷川氏が組織化の経緯を振り返る。
登録業者に対して、設計事務所の受託情報全てが、電子メール(一部FAX)で一斉同報される。内容を読んで、参加を希望する場合、業者は入札の参加希望を出す。その後は設計事務所と建築主とで、業者が決められていく。
◆建築主のリスクを回避する補償システム
分離発注では、建築主(甲)と複数の業者(乙)とが、個々に直接契約を交わす。「元請けとして、品質に責任の持てる仕事をするんだという意識を、それぞれの業者に持っていただきたい」と長谷川氏。
業者の倒産、欠陥工事、事故・・・。分離発注で、一番に挙げられるのが引渡後の瑕疵保証の問題である。1業者1業者の契約には、設計事務所も(丙)としてサインし、建築主に対し工事の完全履行を担保している。一方で、オープンシステムは会員業者との補償共済の協定書を結んでいる。オープンシステムでは専門工事業者が元請けになるので、工事期間中の責任はもとより、完成引渡後の瑕疵責任(10年保証)が生じる。原則は元請け自身の責任だが、それではリスクがあまりにも大きすぎるので、損保大手の東京海上火災と提携して独自の補償制度を構築し、専門工事業者が安心してオープンシステムの工事が展開できるようにしている。ただ、オープンシステムでの現場はそれぞれが元請けとなるので、乙型JVの様な連帯責任意識が求められる。
◆どこかに出てくる専門工事業者の下請意識
「私たちが推薦できる水準の業者の集まりですから、仕事そのものに関しては問題はないのですが、専門工事業者に元請け意識を持ってもらうのはかなり難しい。やはりどこかに下請け意識というのが出てくる」と山本氏。これまでのように、ゼネコンや工務店に最終的な調整をしてもらえるという甘えは通用しない。元請けとして、金銭部分も含めて責任のある工事を行っているかどうかが業者にはっきりと問われている。
「お客さんと仲良くなることはかまわない。棚の一つくらい頼まれるかもしれない。それがサービスなのか、お金がかかることなのか、住んだ人がケガをしたらどうなるのか。きちんと判断して話をしてほしい。オープンシステムの場合、お客さんは自分が建てているという意識が強いものですから、そこはよく理解ができています。問題は、業者さんの意識です」と長谷川氏。
ゼネコンに打ち勝ち、8階建てのビルも手掛けた建築士もいるというオープンシステム。今後、工事業者の客観的な評価・査定、単価情報の開示、選定業者の公開など、蓄積されてきた情報を整理し、オープンにしていく体制づくりに取り組んでいくと長谷川氏は言う。
「CM方式や一括請負方式など、色々な家づくりの会社が存在していいと思います。そういう方法論の棲み分けがきちんとできて、建築主の選択肢のひとつひとつが発達していくというのが、お客様にとって望ましいのではありませんか。私たちオープンシステムは、業者や職人さんが正当な対価をいただいて、仕事ができるという方向性で進むのみです」
『GyousyaBank』登録業者さんが語る
私たちはお客さんに対し、もっとPRしたいんだ
堺日軽建販鰹ャ孫英樹社長は、「ちょっと面白そうやなあ」とオープンシステムに興味をもち、説明会に参加して「これは絶対面白い」と膝を叩いた。
「1番やりにくいのは、建築主さんから『追加・変更にどのぐらいかかりますの』と聞かれるとき。元請けさんの信用をつぶしてしまうような、無責任な答えはできない。本当は建築主さんに、もっと直接PRしたいんです。アメリカでは、工事原価と元請業者の経費が明確に分かれていると聞きました。原価が明確ならば、価格の話も含めて、専門家の立場から建築主さんの相談に乗れる」
分離発注のオープンシステムに対して、「私が思っているのと一緒やなと。絶対このほうが透明感があるし、可能性が広がる」と感じるのは当然のことだった。
元請会社の協力会にも入っているが、入っていれば自然に仕事が来るという意識が、下請業者側にはあるという。
「甘えの構造の協力会とGyousyaBankは違う。GyousyaBankは、仕事を取るためのネットワークです」
全国の案件情報がEメールで送られて来る。遠隔地の仕事は無理でも、「それだけ情報が入ってくれば物件を取るチャンス、ビジネスチャンスが膨らみます」と目を輝かせる。
オープンシステムで、いくつかの仕事を体験した。乙として契約を交わした責任は重く、「絶対に逃げられない」と苦笑いする。
「施工品質が悪かったり、営業マンのミスで仕事が経るのは仕方がない。しかし、仕事を待っているだけでは、こちらの努力の及ばないところ、相手の都合で仕事量が左右される。それはちょっとかなわないですね。だから将来的には、雲つかむような話ですけれども、自社の営業努力で業績を管理できるような動きができないかと常々思っていました」
“元請け志向”という将来の会社の在り方を考えたとき、小孫氏はオープンシステムの仕事に、「その一歩手前」の感触を持っている。
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