コラム/建築革命宣言!
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第32回棟梁の腕と経験がCM手法で現代に甦る (株)トップ
真々田昭司
2001.04.11

渡米して初めて知ったCM
 「オープンシステムの形は、既に8年前から始めています。私独自の方法で」
 と余裕の笑顔で語るのは潟gップ代表であり、一級建築士の真々田昭司氏だ。国内でいち早くCMを採り入れ、過去には注文住宅の3社相見積りで、総額で他社と1800万円の差をつけた実績もあるという真々田氏のCM。そのルーツはアメリカにあった。
 20年前、「和室のある住宅」の分譲を企画した開発会社に頼まれ、渡米した。そこには設計者がいて、別に総合的な管理を担当するCMr、工程や価格の調整、職人の手配も行うスーパーバイザーがいた。真々田氏は設計士兼スーパーバイザーとして、アメリカのやり方すべてを体験した。
 DIYショップへ行けば、材料の価格は2×4材1本まで一目瞭然。エンドユーザが工事を組合に直接依頼すれば、工賃も明確に弾き出される。市民の誰もが材料費と工賃の両方を知ることができる。それがアメリカという国だった。
 「全部が見えている世界。設計料・CM料・スーパーバイザー料・材料代・工賃を、開発会社は全部別々に支払っていた。みんな個々で契約しているんです。そのシステムでできあがる普通の建て売り住宅の坪単価が約11万円! ビックリしましたね」

棟梁、CMを断行。その安さに本人も驚く
 先祖代々大工の棟梁の家系に育った真々田氏は、小学生の頃から現場を手伝い、職人の仕事を見ながら自分も手を動かして、左官や塗装などもひととおりこなせるようになった。18歳の若さで、既に棟梁。宮大工の修業も積んだ。
 「設計事務所は多少わかりにくいところがあっても適当に線を引いて、あとは『大工さん、やってよ』で終わりですが、私は自分で家を造るという、ごまかしの効かない世界を歩いてきた。施工を知らないで、どうして設計ができるのか。『設計したものは自分で作れ』これが私の発想です」
 昭和40年代以降プレハブ住宅が全盛を迎えると、大工の仕事は大半が請負に変わり、注文住宅を思いのままにつくる腕のいい職人は激減した。真々田氏は、現場の数は多いのに利益が上がらないバブル期にも、疑問と憤りを抱いた。
 「日本も材料と工賃の考え方を徹底的に改めるべき」の想いが、CMを断行する決意に変わった。
 施主にはすべてをオープンにして、総額の20%を報酬として提示した。初めは「高い」と言われたが、最終的に当時で坪60万円相当の建物が38万円で収まった。輸入材を使ったというものの、安さに驚いたのは誰でもない、真々田氏本人だった。

CMとは、かつての棟梁の仕事と同じ
 真々田氏のやり方を聞けば、なるほどとうなずかされることばかりだ。
 @材料は業者に任せず、自分で調達して支給。取付費のみを報酬とする。
 A図面にはボードの切り方、張り方・釘を打つ位置や本数など、指示することを全部描く。切断する木材のムダを防ぐために、木拾い表も作成。本来、屑になりがちな短材の収め所も指示。
 B時には真々田氏が職人を指導。
 C作業人工の確定。
 D他の職人さんに振り回されがちな電気・水道工事の日程を、事前に確実に決める。
 E各工事の責任所在は明確に分ける。もちろん計画以外の工事が出れば必ず支払う。
 「大工さんが木材を切るとき、寸法を余計に取り過ぎたりしてムダが出ることがあります。材料の価格とはそんなムダもプラスアルファされたものなんです。ムダ×自分たちの利益で、極端に言うと材料費の30%以上かかっています。手間賃も同じ。私は、材料と工賃の徹底的なムダ取りと、徹底的に計画し尽くした工事管理で、コストダウンを実現しているのです」
 棟梁が職人に材料を与えて造らせる。完成したモノに対して施主が支払いをする。元をたどれば父親のやり方とオープンシステムは同じだと真々田氏は言う。
 独自のシステムで業務を続ける真々田氏は、オープンシステムの思想を知り、強く共鳴した。会員・施主との情報交換の場として、また今後社会的な広がりがもたらされることを期待して会員に加わった。
 「オープンシステムにアメリカのようなスーパーバイザーの導入を」
 真々田氏の提案は、オープンシステムの顧客満足度をさらに高めるものになるだろう。
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