コラム/建築革命宣言!
border

第34回国産・良質のヒノキの無垢材は高くない!?〜木の良さを活かす家づくりを求めて〜 (有)アーキテック
廣瀬茂
2001.06.05

 屋根をふくために垂木の上に貼る、野地板という部材がある。最後には隠れる部分でもあり、コストの低いベニヤを用いるのが普通だ。ここにヒノキを使っているのが、泣Aーキテックの廣瀬茂さんだ。
 「本当は、お客さんは国産材の良質なヒノキを、輸入材と同程度の価格で手に入れられるんですよ。今までの流通や家づくりのしくみが、国産材を『高くて贅沢』にしてきただけ。オープンシステムは、本当の国産材の価格をお客さんに提供します。私のお客さんも、実際自分の家の現場に来て『この価格でこんな材料を買えたのか』と、びっくりしていましたね」
 今回は廣瀬さんに誘われて、彼の仕入れ先、栃木県粟野町にある協同組合粟野町木造住宅センター(以下組合)を訪ねた。

屋根の野地板にヒノキ それが贅沢ではない
 「野地板は夏は100℃ぐらい、冬は零下という過酷な自然条件を受けます。6割が接着剤でできたベニヤは10〜15年で劣化して釘が甘くなり、地震で載せた瓦がはねることもあるんですよ。しかも、棟換気の通風路がベニヤの野地板では結露は避けられないが、無垢のヒノキなら湿度の吸排出をする」
 理屈は確かにそうだが、野地板にヒノキを使えばコストが高くなることは間違いない。
 「そうじゃないんですよ!」
 廣瀬さんと組合の皆さんたちは、声をそろえて一斉に否定した。ヒノキ野地板をセンターのプレカット工場から買えば1坪1300円前後。1坪1800円のベニヤよりもヒノキのほうが500円も安いのだ。

木に造詣が深い建築家に目を見張らせた低価格
 廣瀬さんの設計で、40坪の住宅の構造材の合計額は約110万円。土台柱はヒノキ、桁はスギ、梁はベイマツなど樹種は混合するが、坪約3万円だ。これが町場の材木屋では5万円にアップする。1坪あたり2万円の差。不況が続く昨今、お客さんにとってこれは見過ごせない数字だろう。
 職人の家で生まれた廣瀬さんは、子供の頃から大工さんのそばで木に触れて育った。今もカナダやアメリカの森林に赴き、木に対する造詣は深い。運送業の小林さんの紹介で粟野町木造住宅センターとのつながりをもったが、「木材で産地直送の形が取れるかどうか、正直いって不安だった」。粟野町へ足を運び、製材や木材乾燥の現場を見た。見積りが届くと価格の安さに目を見張った。過去に付き合ってきた工務店との価格差が歴然だった。

現地で見て、触れて、無垢材の良さを知る
 面積の85〜86%を山林が覆う粟野町。山奥には無数の沢が広がる。戦後行なわれた植林によるヒノキ、スギが年数を経て収穫時期を迎えている。ひと沢伐採すれば何10億円というが、それができないままに放置されている。国産材の売れ行き不振が理由だ。流通・販売の問題、集成材を主とした安い外材の大量輸入などがネックになり、国産材は鳴かず飛ばずの状態が続いている。
 「悪い要因が全部に広がって諦めてしまったというのが林業の現状です。しかし、業者は諦めてはいられない。これで飯食っていかなくちゃならないですから。真剣に話しあった結果、市場を通さずに直売するというのがみんなの考えでした」
 と話すのはプレカット工場副理事長の関口圭市さん。インターネットに乗って情報が発信されるオープンネットは、粟野町の木材が全国の現場へ届く可能性を大いにもっている。
 「皆さんに粟野町に来てもらいたい。山に立っている木、家をつくる材、製材の様子も全部見てもらえます」と田村豊さん。
 「ヒノキにも等級がある。せめて“高い、贅沢”の固まったイメージは払拭したい。建築士も建主も木材について学び、地元で育つ無垢材の良さについて知るべきだ」と廣瀬さんは力説する。
 安くていい木材はすぐ近くにある。
border
  
mailto:staff@open-net.co.jp