コラム/建築革命宣言!
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第35回

〜IT利用と住宅建設〜 「住宅産業に一石を投じたオープンシステム」(1)
山中省吾 2001.06.12

元気が良いオープンシステム設計事務所
 建設産業には勢いがない。無理もない。この業界は先の見通しがまったく立たなくなった。どこをとっても明るい要素は何一つ無い…。どうやら、建設コンサルタントの山崎裕司が著した「建設崩壊」「建設動乱」がはからずも的中しつつあるようだ。それは住宅産業とて例外ではない。
 その中にあって、ひときわ元気な集団がある。オープンシステム設計事務所だ。どこへ行っても笑顔が弾け、明るく元気な会話が広がる。
 「第1号の物件が完成した。建築主から感謝の手紙をいただいた。」
 「問い合わせが急増した。これ以上仕事が入ったらパニックになる。」
 「テレビの取材を受けた。ラジオに出演した。雑誌にも載った。」
 ほんの少し前までは、受託することに悪戦苦闘していた彼らである。オープンシステムという手法を顧客に説明することにすら、難儀していた彼らである。
 「そんなやり方は、聞いたことも無い。」
 「理論としては分かるが、現実にできるなんて信じられない。」
 「やっぱり、大きな会社のほうが安心だ。」
 そんな状況が、今では大きく変わろうとしている。厳しい冬を堪え忍んできた先駆者たちに、やっと春が訪れようとしているのか。派手な宣伝や営業に踊らず、たんたんと自らの理想を追い求め、事実として示してきた者の強みがここにある。

出版記念講演会
 今、「価格の見える家づくり・出版記念講演会」がたけなわである。参加設計事務所が自主的に企画したもので、運営、集客もすべて手弁当で行なっている。本も良く売れているので、一層弾みがついた。小生も手弁当で全国各地を飛び回っている。
 2月3日の札幌講演をかわぎりに、いわき、東京、岡山、名古屋、金沢、大阪、富山、小倉、福岡、熊本、東広島、松山で行った。残すところ、岐阜、長野、そして4月15日の浜松講演を最後に一応終わる。
 各地の集客は平均して100名くらいだろうか。さすが、東京は200名を越えた。堂々たる横綱級である。目を見張るのは熊本での集客だ。オープンネットの会員(設計事務所)がいないにもかかわらず、100名以上の集客をした。会員ではない設計事務所の人が、積極的に知人に呼びかけてくれた。本来なら反感を持ってもおかしくない地場ゼネコンの人までが、集客に協力してくれた。
 オープンシステムの講演会は「業界関係者はご遠慮ください」などという野暮なことは言わない。まさにオープンだ。一般の人たち、設計事務所、施工関係者、いろいろな人たちが集まる。一切の情報を包み隠さずに話すので、このような講演会が開けるのだろう。
 したがって、質疑もおもしろい。とりあえず仕事上ではライバル会社の人が賛同の意を表したり、おおいに反発し、不快感をあらわにしたりと。また、専門家の質問が少々的外れで、くすくすと笑いが漏れるたりする。逆に一般の人が良く勉強していて、妙に関心したり……と。
 講演会終了後は、参加していた建築会社を尻目に、そこかしこでオープンシステムの設計者は、家をつくりたいという人たちに囲まれ、建築相談に応じている光景が見られた。

急激な伸びの背景は?
 オープンシステム? 名前だけかもしれないが、建築業界の人たちには、少しは知られるようになった。だが、一般の人たちには、まだまだ浸透していない。「住宅メーカーや工務店がいなくても家はできる!」こう言って、建築主と設計事務所、それと専門工事会社が主体者となって、累計で300件ほどの家をつくった。いや、家だけに限らない。店舗も工場もビルもつくった。
 オープンシステムは10年前からはじまったが、設計事務所のネットワークが広がったのは3年くらい前からで、それを契機に物件数、設計事務所の参加数とも急激に増えはじめた。特に今年(2001年)に入ってからの伸びは、目覚ましい。
 昨年(2000年)1年間で約120棟の建物が着工した。今年(2001年)は「1日1軒のペース」を思わせるような勢いだ。オープンシステムに賛同する設計事務所も急激に増え、昨年(2000年)は55社から112社になった。今(2001年3月)は140社になっている。しかも、参加している多くは弱小設計事務所であり、営業マンを抱えることもなく、宣伝広告費をほとんど使うこともなく、受託を拡大している。
 このような背景には、一体何があるのか…?。ITの効果的な活用か? それとも、オープンシステムには住宅建設を根本的に問い直す何かがあり、それが徐々に浸透し、顧客の支持を得つつあるのか?
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