コラム/建築革命宣言!
第37回
〜IT利用と住宅建設〜 「住宅産業に一石を投じたオープンシステム」(3)
山中省吾 2001.06.12
IT活用がオープンシステム拡大の推進力に
一方、遠心力ともいうべき対外的な働きかけにも、ITの活用はおおいに寄与している。オープンシステムの急拡大は、IT活用を抜きにしてあり得なかった、と言っても過言ではない。
ただし、オープンシステムそのものはIT無しでも成り立つが、もし、ITの効果的な活用に着目していなかったら、拡大の速度は微々たるものだったに違いない。極端にいえば、オープンシステムが従来のように紙情報や電話、ファックスに頼っていたら、この1年間でなし得たことは、通常なら5年はかかっていたのではないかと思う。まさにITの凄さを実感する。
ただし、オープンシステムはITに関して、特別の新技術を開発した訳ではない。すべて既存技術の応用で、建築士自らが構築したものだ。ありふれたITの既存技術を応用し、新しいビジネスモデルを構築したところにオープンシステムの真骨頂がある。
だから、他者とはっきりした違いがあり、自己主張を持ち、情報としての価値を持つ。オープンシステムは、住宅産業を根本から問い直すほどのインパクトを持っているからこそ、このようなコンテンツがITに乗って流れると、従来では考えられないほどの速度で広まっている。
事実、オープンネットに参加する設計事務所の数と各事務所の受託件数は、IT化と共に急拡大しているにもかかわらず、オープンネット株式会社は参加設計事務所を拡大するにあたって、通常行われている宣伝、営業はほとんど使っていない。営業マンは存在しないし、宣伝広告も基本的に行っていない。対外的な広報の窓口として、ホームページを開設しているだけである。
ホームページのアクセス数は目下のところ1日に約500件。これはIT産業の世界では特に脅威的な数字ではないが、昨年の平均が1日に約200件だったことに比べれば、確実に増加の道を辿っている。アクセス数を上げるための宣伝広告やリンクに関しては、特に何も行っていない。
特筆すべきは、「OMIAI」のコーナーだろうか。建築主と設計事務所を結び付けるために開設したもの。家をつくりたい人と、業務を手掛けたい設計者の出会いの場と思えばよい。フィーリングカップル誕生の建築版である。ここには建築主から毎日のように申込がきている。昨年は1ヶ月に1件のペースだったことを思えば、これも脅威的な増大だ。
設計事務所の受託機会の拡大として、「OMIAI」コーナーを開設したが、これはあくまでも補助的なもので、建築主がそれぞれの直接設計事務所に直接アプローチして決めるのが基本だ。設計事務所にもオープンシステムに参加すれば受託機会が増えるなどとはけっして言っていない。むしろ、受託するのは非常に困難、個々の設計事務所の能力と努力しだい、と説明している。だから、「オマケ」がやけに多いので、オープンシステム設計事務所は賑やかで活気に溢れている。
時代はいつも変化している
かつて、ねじりハチマキの大工が、焼酎片手に言ったものだ。「こんなもの、家じゃない! オレたちのつくる家は100年はもつ。だから、営業などしなくても仕事はくる」と。
大手住宅メーカーの全国展開が盛んになりはじめた、30年くらい前の話である。それが、今はどうだろう。元気の良いねじりハチマキの大工は、とんと見かけなくなった。それどころか、いつのまにか住宅メーカーの下請けとして家づくりに参加している。(本意か不本意かは分からないが)
住宅産業はわずか30年ほどのあいだにずいぶん変化した。地場(地域密着であるべき)の工務店がモデルハウスをつくり、営業マンを大勢抱え、宣伝広告費を大量投入している。まるで、全国展開のハウスメーカーと同じことをしなければ、時代に取り残されると言わんばかりである。しかも、できあがった建物の外観や内装までが、大手住宅メーカーと何ら変わらないものとなった。
ところが、絶好調にみえるその大手住宅メーカーが、やっと勝ち得た四番バッターの座をここにきて不安を覚えはじめたというのに…。それはIT化の急激な進展が、この住宅産業に思いもよらぬ変化をもたらすからだ。
これからはじまる住宅産業の変化は、過去30年間の変化に匹敵するものを、わずかの期間で急速にもたらすかもしれない。住宅産業には、ITとは対極にある泥臭い人海戦術の非効率が未だに多く残っているからである。
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