コラム/建築革命宣言!
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第40回解体工事は家づくりのスタートだ!!
秋山延久 2001.07.10

 家づくりは、お客さんと、設計士(CMr)、実際に施工に携わる専門工事業者さんの三位一体となった共同作業である。
 そこで、今回は正会員の泣Xプーンハウス代表、池田正次さんら関東の会員さんに、GyousyaBank からご懇意の専門工事業者さんをご紹介いただいた。
 総合解体工事業の潟Aキヤマ。代表取締役の秋山延久さんに、オープンシステムの仕組みに沿って直接お客さんと契約する、施工業者の側からのお話をお伺いした。

設計士さんの仕事に対する姿勢に共感
  「オープンシステムの建築士さんたちと出会えて、良かったと思っています」
 秋山さんは穏やかな口調で話し始めた。
  こんなことがあった。あるお客さんが安値を理由に、解体工事業者を指定してきた。エクステリアや解体工事は、建物の本体建築と独立している面も多いため、こういう話はよくある。
 だが、アキヤマの見積金額と大きな隔たりがある。秋山さんは、担当された設計士さんに「この(不当な)安値で、発生廃棄物の適正マニフェスト処理が可能なのでしょうか」と尋ねてみた。設計士さんが確認すると「マニフェスト伝票*1が必要なら、作成代金として15万円(!)上乗せになる」と居直ったという。
  この設計士さんは、適正処理について調査し、お客さんに廃棄物処分の必要性について説き、アキヤマに発注してもらうことにした。
 オープンシステム会員の、設計・施工管理に対する責任と姿勢に共感を覚えたと、秋山さんは語る。

総合解体工事も工事管理(CM)が仕事
 秋山さんがオープンシステムに共感する理由はもう一つある。アキヤマの従業員7名は、全て技術者なのだ。では、結局、解体工事は重層下請け構造のままなのか?
  「う〜ん、ちょっと違う。解体工事を担う専門工事は、多岐*2にわたります。建築をするときに多くの職種が必要なように、建物を解体するときにも様々な専門職(専門工事有資格者)が必要になる。全部とりまとめて、初めて“総合解体工事”。これらを分離発注すると、建築士さんも大変になるし、VE管理も困難になる。例えば建築の躯体工事では、型枠大工と鉄筋工とコンクリート工は、規模によっては分離発注に適さない場合があると思う。これらの業者間の調整に失敗すると、大変なことになる。解体工事も同様」
  アキヤマは専門工事業でありながら、管理手法で言えば総合工事業者に近い。分離できない、ひとつのまとまった“総合解体工事”での個々の職人さんの仕事の調整は、スキマ管理が最も重要であり、建築士さんが挑戦しているオープンシステムと同じ。だからオープンシステムの仕組みは、聞いてすぐに理解できたという。

後工程のための解体ノウハウをご提案していきたい
 解体工事では、最新鋭の技術を導入しても、近隣生活者への騒音・振動などの感覚公害がどうしても発生する。また、歴史を経た建物や敷地の“近隣境界”には、色々な問題が潜在する。安易に解体除去できない部分もある。
 解体工事は、建て替え新築工事で一番はじめの工程。ここで第三者とのトラブルが生じれば、後工程にしこりを残してしまう。竣工後、そこに住まうお客さんとご近所とのつきあいに、禍根を残す場合もある。近隣対策・建築技術・工程管理・・・後工程と、お客さんの暮らしへの考慮が問われる。
 「今後設計士の方々に、後工程第一主義の解体ノウハウを、積極的に提案していきたいですね。またお客さんともご面談して、技術的なことなど何でもご質問いただきたいし、現実のご報告も差し上げたい。長年の思い出が詰まった建物を取り壊すのです。ただ単に壊すのではなく、色々なお話をしたいですね」

「解体」の発想が家づくりを変える
 自宅を壊す前に解体業者と相談して、リサイクルできるものは、新築の家で再利用する。新築の家も、いつの日か壊すことを想定して、環境に影響の出ない自然素材を使う――。
 「先を読むという解体業の発想で、建築全体が見直されていけばと思います。森林を伐採した後にこれ以上伐るなとか、今までの環境対策は全部後手を踏んできました。先手で何かができる建築が確立されていけばといい、と思います」
  昔とは違って、家庭でゴミが何種類にも分別される時代。子供たちは、家庭や学校でゴミの分別ルールの重要性を教育されて成長している。彼らは環境への意識を持って社会に出ていく。「環境問題に対する将来展望は明るい」と、秋山さんはゼロエミッション時代の早期到来を確信している。


*1 許可を受けた処分場に適切に処分したという証拠となる記録伝票。廃棄物の処分に際して、法律によって作成・保管が義務づけられている。伝票自体の価格は数10円。そもそもマニフェスト作成料を取ること自体、実に怪しい。
*2 仮設足場・内装解体・山留工・鳶工・ガス工・斫り工・ワイヤーソー・アスベスト取扱者・ダンプや重機の操縦者・・・

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