オープンシステムの経緯と考え方
そこに住んで生活する人、そこで働く人、そこで遊ぶ人、泣いたり笑ったり感動したり、怒ったり安らいだりがんばったりする人、建築とは本来このような人たちが主役となって建てられなければならないはずです。 建築を依頼する人が主役となり「本当に望むもの」を手に入れるためには、今までのような建築業界独特の考え方や仕組みから脱却し、新しい考え方による新しい仕組みに拠って計画し建てられなければなりません。 そのために私たち建築の設計者はどのように変わらなければならないのか、またどのようなことが出来るのだろうか、というところから生まれてきたのがオープンシステムです。 オープンシステムの設計者は、依頼主の良きパートナーとなって、専門的な知識と技術を駆使しながら建築を進めていきます。計画から完成まで、さらに完成後のことも含めて、依頼主にとってどのような選択が最善かを常に考えながら、情報を全てオープンにして建築を進めていきます。 口コミで拡がってきました。オープンシステムは1992年鳥取県の建築設計事務所である山中設計が、ふとした疑問から始めました。「こうやったほうが建築を依頼する人にとってより良いのではないか」「このほうが建築設計者の本来の姿ではないか」といったことを、実際の業務を通して実証しながら形創られてきました。 当初は建築の依頼主や専門工事会社の方々から理解を得ることに随分苦労をしました。建築革命宣言という小単位のセミナーを粘り強く繰り返しながら、実績を積み重ねることにより少しずつ理解と賛同の輪が拡がってきたのです。 そして、自分もそのように感じていた、という設計者が全国各地から現れ出したのは、1996年頃からです。このようにして、1社2社としだいに全国各地に口コミで拡がりつつあります。 建築とはあらためて生活を考えること、コンセプト創り建築を造るということは、住宅ならばそこで生活を始める人たちが、家族とは何か、生きるとは何かをあらためて考え直すことであり、店舗や工場ならばそこで働く人たちが、自分たちの仕事とは何か、世の中にとってどんな意味を持つのかをあらためて考えることです。つまりコンセプト創りです。 建築を依頼するその人自身があくまでも主体者となって計画が進んでいかなければ、本当の意味で良い建築は実現できません。 私たちオープンシステムの設計者は、建築を依頼する人の身になって責任を負い、心配し、共に考えるパートナーとして行動します。そのために建築業者との利害関係を裁ち切り、自由な立場で発想し結論を導くことを貫いています。 建築を依頼する人が主役に建築の依頼者は計画、設計、工事発注、工事監理に積極的に参加することができます。今までの建築は自分の建物にもかかわらず、専門家に任せ、専門家が結論を下して、出来上がった結果だけを依頼主が受け取った、という受動的な受け手となっていたのです。 建築の依頼者が積極的に建築に参加し、重要な部分に関して自ら専門家と共に結論を出すためには、金額を含めた全ての情報が公開されなければなりません。 オープンシステムはまさしくこのことを実現するために考え出された手法なのです。その根底には、業者のために依頼主がいるのではなく、依頼主のために専門家がいる、という思想に貫かれているから、仕組みそのものまで変えることが可能となったのです。 依頼主と設計者の契約関係オープンシステムの設計事務所は、依頼主と業務に対する委託契約を結んで建築を進めていきます。業務の内容は、
等が有ります。その内容につき、依頼主や専門工事会社の人たちと連携しながら建築を進めていきます。私たちオープンシステムの設計事務所は、請負ではなく業務委託契約であること、しかも実際の工事はゼネコンやハウスメーカー、工務店などに一括で任せずに、依頼主から直接各専門工事会社に分離発注すること、を基本としています。だからこそ透明性と自由性を確保しながら、建築を進めていくことが可能となるのです。 計画は自由に、個性的に企業の理論で計画を進めると、どうしてもこれを売り込みたい、ここの部分は絶対に依頼者には隠しておかなければならない、ということが前提で話が進みます。それはたとえ一級建築士であっても、その人の置かれている立場によってどのように振る舞うかが決まります。 ゼネコンやハウスメーカーの社員であるならば、依頼主の利益と会社の利益は相反します。会社の方針に沿って話を進めざるを得ないのはやむを得ません。悲しいかなそれが現在の建築業界の仕組みであり、隠れている部分が大きければ大きい程ある意味で利益も大きいのです。 私たちオープンシステムの設計者は、施工会社とは利害が発生しない立場で仕事をします。ここが最大の強みであり、依頼主の身になって自由に情報を選択し伝え、個性を発揮した建築を創ることが可能なのです。 基本設計は模型やCGで依頼者が参加して専門家と共に結論を出す、といっても設計図面だけでは設計の内容が依頼者にうまく伝わりません。話が一方通行になることを恐れるのです。 そこで私たちオープンシステムの設計者は、模型あるいはCG(コンピューターグラフィックス)を駆使して依頼者に基本設計の内容がよく分かるように、最善の努力をしています。建築はコンセプト創りと基本設計でその後の骨格がほぼ決定付けられるため、最も重要な部分と考えているからです。 今までの経験からしても、依頼者にとってどうしても図面ではよく理解できないことが多いようで、模型を見ていただいたとたんに俄然目が輝きだし、意見や感想がどんどん出てきます。実は私たち設計者にとっても、模型やCGで確認することによって、あらためて発見することも随分あるのです。 実施設計は緻密に詳細にオープンシステムの場合、見積に参加してくる業者は基本的に自由参加です。しかもゼネコン、ハウスメーカー、工務店といった元請け会社に工事全体を全て一括で見積もらせるのではなく、業種毎の専門工事会社に見積に参加していただきます。 そのためには、どこの会社が見積もっても同じ条件で見積ができる設計図面でなければなりません。たとえば建具工事なら、その建具はどんなデザインなのか、材料はどういうものか、厚さはいくらか、ガラスはどうか、金具は、という具合に各部の詳細が設計図面に明記されていなければ、建具屋さん(専門工事会社)は正確な見積を出すことができません。 もし図面が不十分なら、専門工事会社は自分に都合の良い見積をするか、万が一のために余裕を見た見積になってしまうのです。確認申請や住宅金融公庫が通ればよい、というだけの図面では正確な見積はできないのです。当然、工事が始まってからも現場は混乱し、建物の品質にも影響してきます。 見積の価格は透明にオープンシステムでは、それぞれの専門工事会社から提出された見積書はそのまま依頼者に公開されます。それを業種毎に整理して、内容と価格が検討されます。過去の類似建物と比較したり、オープンシステムの全国の事例と比較することもできます。 また見積書の提出と共に、専門工事会社から設計内容に対する改善提案も受付け、依頼主も交えて協議します。施工現場における知恵と知識は専門工事会社の人たちが最も豊富だからです。 このようなことが可能なのも、オープンシステムの事務所は施工会社と利害関係を持たない中立な立場で業務を遂行できるからです。つまり、建築を依頼した人に対して、隠さなければならない必要が何も無いからできることなのです。 工事は分離発注で専門工事会社、普通は下請さんといっていますが、大工さん、基礎屋さん、サッシ屋さん、内装屋さん、というような会社です。実際の施工現場においては、本当の主役はこの人たちなのです。住宅の場合は15社から20社くらい、ビルなどの大きな工事だと30社、40社もの専門工事会社の参加が必要になります。 オープンシステムでは建築の依頼主さんと、これら専門工事会社が直接工事請負契約を交わします。したがって契約のときには一社ずつ、「塗装工事の**です。どうかよろしくお願いします。」というような挨拶が交わされます。施工における最初のコミュニケーションの場です。 今までの常識では考えられないことかもしれません。建築工事の場合は必ず元請会社がいて、工事全体を一括で契約し、下請へ、孫請へと外注に出されてきたのです。 競争原理が働くように工事現場毎に下請というかたちで専門工事会社を寄せ集めて建物を完成させる、建設業と他の業種との大きな違いはこの部分にあります。いわゆる多重下請構造といわれる所以です。 通常元請会社は下請会社に対して系列を作っています。下請会、協力会といわれるものです。工事か発生すると下請会や協力会の業者が見積もり、元請会社に提出します。そして元請会社が工事を受注すると、下請け会や協力会の業者に仕事が廻ってくるという仕組みです。 オープンシステムの場合、専門工事会社は各業種毎に自由に見積に参加することができます。採用されるためには工事実績や価格面で勝ち残らなければなりません。価格優位性も技術力の一部です。馴れ合いでは受注できません。おのずと自社の中にある無駄を見つめ直し、技術力を磨くための努力を欠かせなくなるのです。 工事工程表と支払リスト見積の徴収、工事業者の選定等の作業と並行して工事工程表を作成します。つまり、どの業種がどのような順番で工事を進めていくのかという計画表のことです。この工事工程表は工事に参加する全ての専門工事会社に渡され、オープンシステムの設計者と連携を取りながら工事が進捗していきます。オーケストラに例えるなら、指揮者とそれぞれの楽器の演奏者のような関係です。 また、この工事工程表をもとに工事代金支払リストが作成されます。建築の依頼者はこの支払リストをもとに、各専門工事会社に直接支払います。基本的には出来高払いといって、その月に出来た工事に対して、翌月の決められた日に銀行振込をしていただきます。前渡金とかを支払う必要は無く、リスク回避にもなります。 第三者の立場で工事を監理建物を建てる位置を決定し、基礎工事、仮設足場、建方、屋根工事というようにそれぞれの専門工事会社が順番に現場に入ってきて、建物はしだいに出来上がっていきます。その一つ一つの工事を私たちオープンシステムの設計者は、図面通りに工事がなされているか、出来映えはどうかをチェックします。施工間違いや不備な箇所があると、指摘して手直をしていただきます。これを工事監理といいます。 オープンシステムの設計者は、建築の依頼主から業務を委託されて工事監理を行います。したがって、第三者の立場で自由に公平に工事監理をすることができます。つまり建築現場の審判員です。 ところが、設計も施工も全て一括で請け負った場合(住宅はこの方式が最も多い)はどうでしょうか。野球の試合に例えれば、巨人、阪神戦の主審を巨人の選手がつとめるようなものではないでしょうか。大部分の住宅建築はこのように、審判員不在のまま建築されているのです。 いかがでしたか?いかがでしたか? オープンシステムのこと、何となく分かって頂けたでしょうか? 説明が拙くて申し訳ありません。オープンシステムは新しい考え方の新しい方式です。身近に具体例を目にしないと、うまくイメージが浮かんでこないかもしれません。それに、建築業界の仕組みって、複雑ですよね。 でも、アメリカやヨーロッパ、アジアでもそうなんですけど、外国の人が日本で建築する場合は、逆に日本の建築業界のことがよく理解出来ないみたいです。設計はサービスとか、原価(それぞれの下請けに支払う金額)と必要経費が明確でないとか.....。 だから最近は、外資系の企業が日本で建築をする場合、母国から建築の専門家を呼んで、マネジメントをしてもらいながら建築をする、といったケースも現れ出しているのですよ。そのほうが価格もずっと安くなって、良い建築が出来た、という報告もあります。 そういえばオープンシステムの事務所の人が、日本に来た外国のプロジェクトマネージャーの人に会いに行きました。そのときこんな話を聞いて帰りました。「日本の建築業はGNPで仕事をしている。Gはゴルフ、Nは飲み食い、Pはプレゼント。」なのだそうです。 |
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