オープンシステム参考資料
11.日経アーキテクチュア「現代のすご腕」
1996年の年明け、日経アーキテクチュアから取材の申し込み。正直言って、マジかよと思った。日経アーキといえば数ある専門誌の中でも、設計者の間で最も評価の高い専門誌のひとつである。新しい建築のトレンドを築き上げ、デザイン面、言論面で業界のリード役を担ってきた。だから、何で自分が、と思った。

創刊20周年特集号で、現代のすご腕、というタイトルにふさわしい建築家を全国から探しているところだという。「すご腕なら私なんかより、宇宙で家を建てるとか、色々すごい人がいらっしゃるでしょう」というと、「そういう意味のすご腕ではなく、現実社会に根を張って、プロとしての存在感のあるすご腕のことで、ともかくお時間を取って下さい」ということで、記者が米子まで来られた。

「私は建築の設計者として、ごく当たり前のことをやっているだけ」と始まった取材、2日がかり。全国から9人の建築家が特集され、幸いにもその中の一人に加えて頂いた。「9人は専門家の論理、言い分を墨守しようとはしなかった。こうであればいいのにという、発注者や利用者の素朴な希望や要求を、事情の知らない素人の言うことだからと切り捨てなかった。むしろ一般の人々を、さすがプロとうならせる事に自分の存在価値を見つけた」と過分な評価。

本来なら私のような者が、日経アーキに取り上げられ、特集記事が組まれるなんて、あり得ない事である。謙遜ではなく冷静な判断として。時代は少しづづ変わろうとしている。近代建築とは一体何だったのかという反省が、建築ジャーナリズムの中に生じてきたようだ。あまりにもタイムリーに私達の試みが目に止まった。
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