オープンシステム参考資料
3.ゼネコン、工務店を取り巻く環境
(この文章は1997.9全国住宅供給公社等連合会総務担当者会議で講演したときの一部である)
施工会社といっても、ゼネコン、工務店、ハウスメーカー、専門工事会社等さまざまな形態がある。大きくは、元請けとなって工事を一括で受注することが出来る会社と、下請けとして専門業種に特化して いる会社とに分けられる。

元請け会社とはゼネコン、工務店、ハウスメーカーのことをいい、下請け会社とは基礎工事、鉄骨工事、 木工事、左官工事、防水工事、サッシ工事、建具工事、塗装工事、内装工事、電気設備工事、給排水設備工事、空調設備工事等細かく分類すれば、50業種位はあると言われている。

建設業と他の業種の大きな違いは、元請けとして工事を受注したゼネコンや工務店が、工事現場ごとに必要な多くの専門工事会社を寄せ集め、下請けとして外注に出すことによって成り立っている、というところにある。多重下請け構造と言われる建設業の特殊性である。

かつて建設業は、技術の主要な部分は元請け会社が押さえ、資材を調達し、下請け会社は役務(労働力)の提供という色合いが濃かった。ところが建設需要の拡大に伴い、元請け会社は下請け会社に、資材を含め各業種ごとに一括して外注するようになった。企業としては、そのほうが効率良かった。

下請けの専門工事会社は、自分の専門業種に関して資材や機材の調達から安全管理まで含めて、全て任されることによって、技術やノウハウをしだいに蓄積していった。つまり、元請け会社(ゼネコン、工務店)から、下請けの専門工事会社に、技術とノウハウが少しずつ移転していった。

さらに、元請け会社でなければけっして出来なかった部分、例えば施工図の作図や、現場管理そのものまでも外注するようになった。もっとも施工図に関しては、技術とノウハウが専門工事会社に移ったので、 それは必然の結果ともいえる。

その結果、元請け会社には、工事を受注する為に必要な営業や企画、調査、設計等のサービス業務、工事の内容を分解して、それぞれの専門工事会社に発注する業務、現場の工程を監理する業務が、主な業務として残った。

このように、各業種毎に全て外注、という体制を整えることによって、元請け会社の生産性は伸び、利益につながった。究極の外注は、受注した建物全体を別の元請け会社に一括外注することであり、商社のような機能を目指すゼネコンも現れた。

ところが、建設業にとってこういった業態そのものが、建設業自らに、特に元請けとして機能してきたゼネコンや工務店に、ある種のジレンマとして跳ね返ってきた。

というのは力を付けた専門工事会社の中から、自社でしか出来ないような新技術やノウハウを身に付け、発注者に直接アプローチするようなところが出てきたからである。商社系の専門工事会社や鉄骨メーカー などには、元請けとして全体の工事を受注するようなところも出てきた。

また、設備工事に関する専門工事会社などを中心に分離発注が進み、次第にゼネコンや工務店の手から工事が切り離されてきた。この傾向はやがて他の専門工事会社にも拡がっていく傾向にある。

元請け会社は下請け会社に外注に出した費用に上乗せして、発注者に工事金額を提示している。元々、工事費全体の中から、グロスで利益を出せばよい、という体質から、営業費用、各種調査費用、 企画、設計費用等は、見積書に明確に記載していない。受注する為の手段(サービス)として、 極めてファジーに、下請として外注している専門工事会社の見積もりに上乗せしてある。

このことは分離発注の拡がりや、専門工事会社レベルの価格が発注者に明確になるに従って、益々元請け会社(ゼネコン、工務店)を苦しい立場に追いやることになりつつある。
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