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設計者コメント 93年7月、酒類量販店Aが私達の新しい試みによって完成しました。消費者は今の価格にけっして満足していません。良い品を安く、言い換えれば商品の価値に値する適正な価格で手に入れることを望んでいます。 この建物の発注者は酒類の流通に挑戦して、消費者の要望に答えようとしました。私達建築設計者もまた、建築の多重下請け構造という仕組みに挑戦して、発注者の要望に答えようとしました。奇しくも、この建物がオープンシステムの第1号となりました。 流通業界には、メーカー→問屋→小売店→消費者という流れがあります。建築業界にも、下請け会社→元請け会社→依頼主という構図があります。当初私達の最大の関心事は、既存の請負方式によって生じている大きな無駄をいかに省くか、という点にありました。この建物は建築工事の各セクションを担当する15の専門工事会社に分離発注して、工事を完成させました。 見積もり参加の呼びかけは、各専門工事会社を訪問して私達の趣旨や方式を説明してまわりました。この方式を理解してもらうことに、そうとうの労力を必要としました。賛同を得られたところから、各業種ごとに2〜3社づつ参加してもらいました。工務店には声をかけなかったのですが、参加希望が1社あり、拒む必要も無いので参加していただきました。 最終的に決定した各専門工事会社の金額と、その時に工務店が提出した見積もり金額との比較を示します。合計金額を比較しやすくしたため、( )内の金額は合計額に加えていません。設計料200万円、工程管理料200万円の計400万円が私達の業務報酬料でした。始めての試みであり、どの程度の業務が発生するのかというデータをとる必要があったことに加えて、私達にとっては実験的にさせていただくということもあり、かなり安く設定しました。600万円から800万円位の報酬が必要かと思いました。 |
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専門工事会社と工務店の見積金額の比較 (単位:万円)
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木造の大きな空間をローコストで、というのがコンセプトでした。この目的が本当の意味で達成されたのか、ということについては、まだ結論が出せません。何故ならこの業界には、ローコストに繋がる未解決の要因が、まだ数多く残されているような気がするからです。 それはともかく、いままでの建築設計事務所としての感覚からは、驚くほどのローコスト建築であり、工務店の見積もりと比べても、かなり安くなっているのは事実です。それにしても、5,286万円から3,854万円を差し引いた1,432万円が、工務店の利益として各項目の中に隠されているとは信じがたく思いました。そこで、考えられそうな他の要因を推論してみました。 ローコストに結びつくように設計上の工夫を盛り込んだのですが、工務店の技術者は設計の意図を専門工事会社に伝える際に、充分理解されていなかったのではないでしょうか。従って、いままでのように材工共の感覚で、単純に積算数量×単価を集計しただけではないでしょうか。 工務店は下請け会、協力会といった専門工事会社のグループから見積もりをとっています。このように外注先が固定化され、価格競争が生じにくい中での見積もりは、実勢価格が反映されていない部分があるのではないでしょうか。 というようなことが考えられましたが、あるいは建設業の仕組みそのものが本当に高コスト体質になってしまった為、多くの経費を必要とするのでしょうか。 |
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